ニュージーランドメリノの高い品質は、その生産地、南洋に浮かぶニュージーランドの澄んだ山岳放牧地の環境によって生み出されます。また、その先進の放牧システムは、メリノ牧羊業者たちの何世代にもわたる献身的努力によって培われました。ニュージーランドは、適度な降雨と四季の変化に恵まれた国です。メリノ 生産の中心は南島の山岳地帯ですが、メリノ羊は春から秋にかけて、急斜面に自生するハーブを餌に放牧され、山が雪で覆いつくされる冬季には低い平地に移さ れます。類い希な環境と、それに順応して作り上げた牧羊技術が、ニュージーランドメリノを他の羊毛とは異なるものにしています。起伏に富んだ地形を利用し て、メリノ羊は一年を通じて十分な栄養を摂取し、卓越した品質の羊毛が生み出されているのです。
冬の間、羊の身体を守ったフリース(羊毛)は、夏の強い日射しによって黄色化する前、春先に刈り取られます。高地が雪に覆われるニュージーランドの厳しい 冬を生き延びるため、この時期羊毛は密生し、毛先を除いて外部から遮断されています。このため、春を迎えてすぐに刈られたニュージーランドメリノは、際 立った白さを誇ります。この白さは、淡い色をより美しく、濃色をより深みのある色にします。
ニュージーランドメリノは一頭ごとの羊毛(フリース)における繊維長のバラつきが少なく、一頭から均等で長い毛が収穫されます。また、繊度のバラつきも少ないため、糸は均質で毛羽立ちが少なく、美しい表面感、スムースな肌触りが得られます。
高地、中高地、低地と起伏のある地形を最大限利用することで、一年を通じて常に草のある場所を確保できるため、羊は移動しつつ、安定して栄養を与えられます。このためニュージーランドメリノは時期的な栄養不足による軟質化が生じることなく、均質であり、卓抜の丈夫さを備えています。これにより、さらなる軽量化、薄手生地など、加工の幅を広げ、新たな分野の製品開発を可能とします。
ニュージーランド産メリノの年間生産量は約8,000トンで、全世界メリノ生産量60万トンの1.33%に過ぎません。繊度は13ミクロンから24ミクロンの幅にあり、継続的な品種改良の努力によって今後さらに全体として細番化に向かう傾向があります。平均繊度はニュージーランドメリノが19,0ミクロンであるのに対し、主要生産国オーストリアは21~22ミクロン、南アフリカ共和国は22~23ミクロンであり、ニュージーランドはよりソフトで稀少なメリノ供給国となっています。
羊毛にはクリンプとよばれる細かい縮れがあります。ニュージーランドメリノのクリンプは厳しい冬を過ごすため、他の国のメリノと比較してクリンプの数が少ない反面、湾曲が大きく、曲げ、ねじれ剛性が高くなります。このため、弾力性、かさ高性に富み、しわ回復力、適度なストレッチ性、ふくらみ感を備えています。
放牧地に自生するハーブや牧草は、入念なローテーションによって羊に与えられ、羊毛に絡み付く種子などは、十分に生成されないように管理されます。また、適度な降雨は、草を育むだけでなく、砂埃をおさえ、これらの羊毛への混入を防ぎます。より少ない夾雑物は、羊毛加工段階におけるより美しい仕上がりを生み出す大切なメリットです。