紳士向けを中心とするニット衣料製造卸の林田(大阪市東成区)が百貨店で受注しているカシミヤ製横編み衣料のオーダーメードの売れ行きが、新型コロナウイルス禍の中でも好調だ。林田誠司社長は、「デザイン力、技術力、設備、そして顧客層といった当社の資産を組み合わせて初めて採算を合わせることができるオンリーワン事業」だと評価。この事業の拡大に注力すると言う。
百貨店にある同社の25店舗で受注している。得意とする紳士用だけでなく婦人用もそろえる。消費者は、その中から好みのアイテムや色、サイズを選び、身丈と袖丈の調整を依頼できる。価格は9万円台〜42万円台。
受注後、和歌山県田辺市にある同社の横編み兼縫製工場で生産する。同工場は島精機製作所のデザインシステムを備えている。これを活用して、個々人の身丈と袖丈に応じた服を設計。島精機製作所のコンピューター横編み機で編み立てた後に、リンキングする。
編み立ての設計から入る必要があるため、横編み製品のオーダーメードは採算を合わせにくいとされるが、「当社は日本で初めてその事業化に成功した」と林田社長は誇る。20年近く前にこの事業を開始し、以来右肩上がりで売上高が増えてきた。新型コロナ禍の中でも増え続けているという。結果、この事業の売上が全社の10%を超えた。さらに高める方針だ。
同社はカシミヤ製を中心とする紳士カジュアル既製品「レセント」を百貨店で販売している。この商品が富裕層を中心に支持されてきた。価格よりも価値にこだわるような客層を持つことがオーダーメード品の売行きが好調な要因だとみられる。
OEM事業は安定
林田は、和歌山県田辺市に持つ横編み兼縫製工場を活用し、高級衣料のOEMにも対応している。
国内外の富裕層向けブランドから発注があるため、この事業の業績は安定している。売上高の8割は自社ブランド「レセント」で稼ぎ出すが、利益への貢献度はOEMの方が高いという。
同工場で編み立てから行う横編み製品だけでなく、外部調達した丸編み地や織物を使ってOEMにも対応する。同工場の従業員は25人。