和歌山県の田辺市に自社工場があります。25人の体制で、月あたり約2500枚を生産しています。当社の国産比率は6割、残りの4割が中国です。国産品の35%をこの工場から出荷しています。商品は百貨店向けのベターゾーン商品で、カシミヤセーターで7万5000円以上、ニットシャツなら1万5000以上のものが中心になります。
基本は一枚一枚、手作業でのものづくりになります。素材は同じカシミヤでも発色のよい最高グレードのホワイトカシミヤを使います。付属品であるボタンは貝ボタンや水牛のボタンで、貝ボタンには自社ブランド「レセント」を刻印します。
染色も1色で染めることはありません。どんな色であろうと“深み”のある色にすること大切にします。例えばベージュ1色を出すのに7,8のカラーをブレンドして、作り上げていきます。
こうした生産背景をベースに既製品だけでなく、ニットのパターンオーダー(PO)も手がけています。スーツなどと違いニットのPOを事業化しているところは多くありません。グレードが高く、自分にあったサイズが欲しいという消費者のニーズをつかむのが狙いです。毎年、受注枚数も増えてきて、昨年は年間1000枚を超えました。
国内生産の見直しが進んでいること自体は評価できます。しかし、国産品は付加価値があってこそ、支持されるものです。その分、ものづくりが複雑になる一方です。生産量は当然限定されますが、技術伝承がより難しくなることが予想されます。ある程度のレベルに達するには少なくとも4〜5年は必要です。若い世代の後継者をどう確保していくかがますます重要になってくると思います。
林田 田辺工場長 柳瀬照幸